▼作品 ▼審査評
頼山陽賞
加古川市立陵南中学校 二年
綛谷 友唯さん
「唯真故新」を書くにあたって、自分らしく伸び伸びとした字を書くことに重点を置きました。自分らしく伸び伸びとした字を書くために気脈を意識し、一文字一文字丁寧に書きました。枚数を重ねるごとに、納得できる字が書けるようになりました。
書道の楽しさや様々な技法を教えてくださる先生には感謝しかありません。
これから、見てくださる方の心を動かせるような字が書けるようになりたいです。
広島県教育委員会賞
広島市立基町高等学校 二年
藤原 茉子さん
この度は、広島県教育委員会賞という素晴らしい賞に選んでいただきありがとうございます。
今回、初めて頼山陽の作品の臨書に挑戦してみました。文字の流れを意識し、頼山陽の作品と見比べながら、文字の形も細かいところまでこだわりました。何度も練習を重ねるうちに、自分が納得いく作品に仕上げることが出来ました。これからも様々な書体に挑戦し、楽しく作品を書いていきたいです。
広島市教育委員会賞
ノートルダム清心中学校 一年
武智 祐璃奈さん
この度は、このような素晴らしい賞に選んでいただき、ありがとうございます。
書道展出品にあたって「浩然之気」の意味を学び、中一の今の私に教え諭してくれているように感じました。この言葉との邂逅の喜びと言葉自体が持つ力強さを自分の手で長半紙に表現したいと思い、清々しさと力強さを意識して書きました。
今後は、言葉に対する自分の思いを余すことなく表現出来るように練習を重ねたいです。
福山市教育委員会賞
並木学院高等学校 二年
有田 陽菜さん
この度は、このような素晴らしい賞を頂きありがとうございます。作品の特徴を捉えるためによく観察し、自分の筆の運び方を一から見直しました。初めは誤字脱字が目立ちましたが、一字一字を字典で調べながら練習に励みました。何度も練習を重ね、自分の納得のいく作品に仕上げることができて良かったです。これからも色々な書体に挑戦し、技術を磨いていきたいです。
熊野町教育委員会賞
広島市立鈴張小学校 六年
塩田 芽花さん
私は「忠孝」と書きました。
書く時に二つの文字のバランスに気を付けて書きました。「忠」と言う字の最後のはねる時や、「孝」と言う字の左はらい、「子」の大きさなどこまかい所に気を付けました。
「孝」と言う字は、「忠」と言う字よりも大きくなってしまってとてもバランスをとるのがむずかしかったです。
これからは、文字のバランスに気を付けながら書きたいと思います。
特選
広島県立高陽東高等学校 三年
細川 奈々花さん
この度は、このような賞に入賞させていただき、大変光栄に存じます。今回の作品制作は、頼山陽の書と真摯に向き合い、自分自身の表現について深く考える非常に有意義な時間となりました。これまでの制作では、分からないことがあればすぐに先生に質問することが多かったのですが、今回はまず自分で考え、調べることを大切にしました。この過程を通して、自分の書に対する課題や改善点が明確になり、書くことへの向き合い方が以前よりも一層深まったと感じています。今回得た学びや気づきを今後の作品制作にも生かし、より説得力のある表現を追求していきたいと考えています。
稲美町立稲美北中学校 二年
松村 美緒さん
この度は素晴らしい賞を頂き、ありがとうございます。
「唯真故新」を書くにあたり、頼山陽先生の教えを、自分らしい伸びやかな作品で表現したいと思いました。そのために、まっすぐで素直な線質やリズムのある美しい気脈を意識しました。また、余白も含めた紙面全体の構成を考えて書きました。これからも、豊かで躍動感のある表現を求めて日々練習に励んで参ります。
広島市立亀山南小学校 五年
瀬戸川 彩恵さん
真という字を書きました。
目の部分の大きさがむずかしかったけど、先生に教えてもらってできるようになってうれしかったです。
右上がりをそろえること、横線のすきまをそろえることが得意になったらいいです。
六年生の忠孝もがんばりたいです。
奨励賞
広島県立賀茂高等学校 三年
平賀 実和子さん
この度は奨励賞という素晴らしい賞をいただきありがとうございます。
私は「外史脱稿戯作」を臨書しました。この作品を書くときに難しかったところは、文字のバランスです。へんとつくりの長さの違いや線のつながりに気を付けて書くことを心がけました。また、余白や文字のつながりを意識してまとまりのある作品になるように練習しました。これからも、いろいろな作品に取り組んでいきたいです。
広島市立広島中等教育学校 四年
木藤 暖乃さん
この度は、このような賞をいただきありがとうございました。この作品を書くにあたって、行間を均等にすること、線の強弱をつけることを意識しました。強い線と柔らかい線をもたせることで線質に変化が生まれ、メリハリのある作品に仕上がったと思います。三行の作品ということで、上手く書けるのかという不安はあったものの、真剣に作品と向き合いながら楽しく製作することができました。今後さらに技術を磨いていきたいです。
広島市立亀山中学校 一年
小田 来果さん
私が「山紫水明」を書くにあたって意識したことは意味のように清らかに美しく書くことです。その中でも、「紫」のバランスが難しく何枚も書き直し、何回も先生と一緒に書きました。そのような苦戦があったからこそこの奨励賞に選ばれてとてもうれしかったし、諦めずに頑張ってよかったと思いました。表彰式では他の人の評価を聞いて、来年自分が書く時に活かしたいです。
広島市立亀山中学校 三年
木口 陽日さん
この度は、このような素晴らしい賞を頂きありがとうございました。「浩然之気」では「之」を書くときに他の字より画数が少ないため、小さく見えすぎないように全体のバランスに気を付けながら書きました。また、文字のつながりを意識し、一画一画を丁寧に書くことでより美しくなるように何度も練習しました。
これからも、書道を楽しみながらたくさんの作品に挑戦していきたいです。
広島市立亀山南小学校 五年
岡﨑 莉桜さん
わたしは、「真」を書きました。工夫したところは、「目」のたて線の接し方をまちがえないように書いたところです。むずかしかったところは、二画目のたて線の上の部分を長くするところです。うまくたて線のバランスが合うように、一画目の横線を少し下に書きました。太く、大きく書いて、明るい作品にできるようにがんばりました。
これからも、先生のお手本をよく見て、きれいな字を書けるようにがんばりたいです。
広島市立鈴張小学校 六年
平田 遥仁さん
ぼくは、「忠孝」という字を書きました。
ぼくがこの字を書くときに難しかったところと工夫したところは、「忠」の「心」の部分です。なぜ難しかったかというと、「心」がせまくなってしまったからです。だから、「心」がせまくならないように、線を細くしたり、一画一画の間を開けて、せまくせず、バランスを良く書くことを意識しました。
これからも、たくさん賞をもらえるようにがんばりたいです。
審査評
広島文教大学
名誉教授 日比野 貞勝 先生
頼山陽の生み出した詩や語句を揮毫する広島県公募書道展「頼山陽書道展」も十周年となりました。応募された作品はそれぞれに意気に富み、創意と工夫が凝らされ、臨書課題においても頼山陽の技と心に学び迫る力作でした。審査は筆使いによる美しさや力強さの優劣は無論ですが、情感の充実度、心境や境地の崇高さという筆意も併せて採点しています。入賞作品は、技と心とが一になって生き生きと運筆された一作一作で、見ごたえ十分、魅力に溢れる秀作といえます。中には孫過庭が『書譜』に記した「智巧兼優、心手双暢」(見識・技術ともに抜群で、心境・手腕ともに暢達している)という句や、蘇軾が『論書』に記した「書には神・気・骨・肉・血あり」(精神・気力・芯の強さ・麗しさ・脈絡)という句、また尊円親王が『入木抄』に説いた「字の形に魂を入れるのは筆の勢いである。筆の勢いのもとは心である」という句をも想像させる運筆や筆意が見られ、頼もしさを覚えた次第です。
ただ、美しく強い線でありながら誤字に気づかず選外となった作品がありました。漢字は表意文字です。漢和辞典で部首とその構造を調べ、その上で表現の工夫をして作品化することが大切です。以下、入賞作品に寸評を記し審査評とします。
特別賞 頼山陽賞 綛谷友唯さんの「唯真故新」は将に「智巧兼優、心手双暢」、「字形に魂の入った筆勢」を想起させる大傑作。澄みきった心境、洗練された用筆美・運筆美で、筆画の隅々まで神経と筆鋒が行き届き生気と緊張感に満ちている。全体の統一力にも目を瞠る美と迫真力がある。特にその生き生きとした筆勢は飛びぬけて優れ、「唯真故新」の句に込めた心と筆とが一になって書かれているようで痛快。落款もまた絶妙、非の打ち所がない。この大きな気宇と強い芯、崇高な筆意はこの巧みな筆法を凌駕する感があり、まさに頼山陽賞に相応しい秀作です。
広島県教育委員会賞 藤原茉子さんの「節臨新居帖除夜詩」は詩境を想起させる「気」と「筆勢」を湛えた迫真の臨書作品。運筆に智と必然性があり、一筆一画のうちにも筆鋒の抑揚・頓挫といった絶妙な変化がある。特に一行目は傑出しており、孫過庭が『書譜』に説く伝統的書法「執・使・用・転」(執筆の深浅、運筆の呼吸、宛転する活鋒、立体的な構成)の具現を見る印象。清澄な風趣、気脈の貫通、生動統一感も味わい深い秀作です。
広島市教育委員会賞 武智祐璃奈さんの「浩然之気」は堂々たる構え、重厚にして秀潤、充実感の溢れる秀作。豊かな性情と揺るぎのない意志、巧みな筆使いに裏打ちされた運筆には目を瞠るものがある。線質の充実感や迷いのない筆勢や確かな結構、美しい余白は一朝一夕になせるレベルではなく、今までの修練によって体得された懸腕・運腕・結構力による賜物でしょう。実直かつ誠実な味の溢れた秀作です。
福山市教育委員会賞 有田陽菜さんの「臨外史脱稿戯作」は詩意と心境を象徴しているような緊迫感の漂う秀作。筆端に注ぐ神経や書き出しから落款まで全く途切れない気脈、懸腕で屹立させた筆勢には清潔感と余韻があり心地よい。行と行間の構成、また統一生動させる意気・筆力にも目を瞠るものがあり、深く味わえる秀作です。
熊野町教育委員会賞 塩田芽花さんの「忠孝」は堅実で真摯な姿勢、力強い筆使い、充実した気力に溢れた秀作。あたかもこの句を象徴しているかのような書きぶりで心に食い入る力と美があります。書き出しから落款まで凛とした気構え、確かな腕法・執筆法で一点一画を組み立て構築していて、気持ちの良い立ち姿や立派な建築物を想像させる。起筆には意気、運筆には生きる力や情感が見て取れる。基礎基本に裏打ちされた秀作です。
特選
細川奈々花さんの「節臨新居帖除夜詩」は詩意・詩境が筆勢や筆脈から溢れるような秀作。筆画相互の呼応や行と行との照応が密で、その調和・統一感がすばらしい。基礎となる結構法や布置章法の手堅さが見て取れる。特に捻筆と提・按が効き線質を高めており、余白にも力感と美と力が溢れている。また“心手双暢”、意連・形連に必然性や自律性も窺え、見事な作品です。
松村美緒さんの「唯真故新」は実直で秀潤、充実感のあふれる秀作。書き出しから落款まで豊かな性情と力強い意志、巧妙な筆使いで非の打ち所がない。洗練された起筆、送筆、収筆の用筆・運筆は句意と一になった美と力が感じられる。特に収筆部には心技一体の妙があり、韻致が高い。一字一字の結構法も傑出、迫真力に満ちた作品です。
瀬戸川彩恵さんの「真」は迷いのないスパッとした心境で、強く美しく完璧に書き上げた秀作。特に中央部の「目」の一画一画の起筆・送筆・収筆というメリハリが適切で典型的な美と力がある。また組み立て方が堅実でバランスもよくとれている。見る者を引き付けて止まない魅力があります。姿勢の良さや修練の積み重ねが窺えます。
奨励賞
平賀実和子さんの「臨外史脱稿戯作」は詩意から日本外史執筆の余勢などを想像して揮毫したような運筆、脈々とした生動感に溢れた力作。確かで安定した懸腕・直筆、意気に富んだ筆勢から生み出されたに線条は美しく、実直な真実味が漂う。書き出しから落款まで全く途切れない気脈・筆脈、行の構成、調和を図り、統一生動させている意気・筆力は見事です。
木藤暖乃さんの「題不識庵撃機山図」は一筆一筆に意気と詩情を込めた運筆と線質、整然とコントロールしている行構成や布置章法に秀でた力作。順筆の起筆や大きな気宇、伸びのある運腕でスケールの大きい堂々たる風趣です。画数の差が大きく、調和を図ることの難しい詩ですが統一生動させる意気・筆力は抜群です。
小田来果さんの「山紫水明」は意志と気力が筆端から溢れ、正々堂々とした力作。特に集中力の高さと筆使いの巧妙さは見事。一筆一筆の確かさや生き生きとした力感、字形の組み立て方や均衡のとり方、充実感は抜群。確かな芯や誠実な味があります。
木口陽日さんの「浩然之気」は心地良いリズム感のある運筆で颯爽とした趣のある力作。特に筆致・筆勢に躍動感があり、文字から文字への意連またその間合いは絶妙。余白も美しく、その全体の調和・統一感もすばらしい。派手さや小賢しさに偏しない美と力があります。
岡﨑莉桜さんの「真」は志を内に秘めたような気構え・力強い筆使いで、バランスもよく取れた力作。一筆目からキッパリとした脚部の最後まで堂々とした筆使いの構えはすばらしい。誠実で生き生きとした美しさと強さがあります。日頃の学びや修練、努力の姿が浮かんできます。
平田遥仁さんの「忠孝」は誠実で素直、すっくとした心境が伝わってくる力作。特に一画一画の筆致と筆勢とがすばらしく、強さや美しさまた生気に満ち、均衡や全体構成も良く取れており見事、余白も美しい。日頃の修練や姿勢の良さに裏打ちされた力と安定感があります。
その他、入選作にも優れたところが多々ありましたが、紙面の都合で省略します。頼山陽は詩や文章で一家を成した郷土の大先達です。また書道においてもナンバーワンの大家でした。特にその書は詩文の境地と一体になった骨法・用筆と、颯爽たる気迫や筆勢、風韻、美しさに特徴があります。その背後には、驚くべき創意と工夫、吟味、思索があります。文学、学問によって鍛え上げられた崇高な気と葛藤・克服の人間の厚みがあります。頼山陽の足跡をたどり、倣い、さらに研鑽を積んで、また来年度も挑戦してください。
安田女子大学 文学部書道学科
教授 信廣 友江 先生
第十回広島県公募書道展「頼山陽書道展」においてご入賞、ご入選されたみなさま、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。
今回は第十回展という記念の年でした。コロナ禍による一年のお休みを挟みつつ、十回を重ねたことに大きな感慨を覚えています。頼山陽の詩句による課題は本展の趣旨を反映するもので、出品作は当初より一貫して山陽の精神に向き合う清々しい作ばかりであったことを思い起こします。このたび審査の最初に全出品作を拝見したとき、改めてそれを感じ、本展の意義を再確認する思いがいたしました。
さて、作品の全体を拝見して最初に思ったのは、いずれもが文字の骨格をしっかり捉え、一つひとつの点画の組み立てや余白に配慮するなど、よく考えながら書かれていることでした。そのためには細かな筆遣いにもかなりの注意が必要だったことと思います。みなさんがさまざまなことに気をつけながら丁寧に書き進めていらっしゃる様子が目に浮かぶようでした。そして、書や詩句に対する真摯な気持ちがよく伝わってきました。書のあるべき姿がそこにありました。
そうした中で、入賞作品を決めていくのは時間を要すことでした。いずれもよりよいものを目指して書かれた力作ばかりです。では、さらにどのような点に気をつけたらよいでしょうか。ポイントはさまざまにありますが、まずは用筆の習熟と筆脈に注意してみましょう。筆遣いの細部に気をつけながらある程度の練習枚数を重ねると表現技量はさらに向上し、筆の運びもより自然になっていきます。鍛えられたなめらかな線、堂々とした骨力のある線など、毛筆ならではの線の魅力はかけがえのないものです。自分が生み出した自分だけの線で、一画目から二画目へと無理なく筆を運び、筆脈の通った書き方ができるようになると、作品全体が生気に溢れてきます。筆に含ませる墨量も大切です。含墨量をゆったりとると、筆の自在性が増してさらに書きやすくなるのではないでしょうか。書作する上で求められる基礎力は全員の方が持っていらっしゃいます。自分なりの具体的な目標を立て、自信を持って練習を重ねていただければ一層の上達を図ることができるのではと考えます。
校種別に記しますと、小学生は五、六年生が対象で、「真」または「忠孝」を半紙に楷書で書く課題でした。「真」は単調になりやすく、「忠孝」はバランスがとりにくい字形ですが、さすが高学年ですね。先にも書きましたように、みなさんは注意深く配置し、一筆一筆を大切に書き進めていらっしゃいました。書き慣れたら今度は大きく腕を動かし、大胆に、伸びやかに運筆してみましょう。さらに規模の大きな作品になることと思います。
中学生は「山紫水明」「浩然之気」「唯真故新」のいずれかを長半紙に一行書きするもので、一年は楷書又は行書、二・三年は行書が課題でした。字数が多くなり、紙面が大きくなると、全体の収め方を含め難易度が高くなります。画数の多寡や字形によってバランスのとり方も変わってきますが、みなさんはよく工夫されていました。とくに上位の方は線に迷いがなく、豊かな筆致で瑞々しく表現されていたと思います。
高校生になると、課題は創作三点、臨書三点からの選択となり、紙面規格もさらに大きくなって難易度は一段と高くなりました。そのせいもあってか、全体としてやはり誤字等にも見誤られやすい表現が散見されたのは惜しまれます。脱字等を含め、草稿段階での文字確認をぜひ丁寧に行っていただければと思います。とはいえ、みなさんの作品は課題の選択にも個性が表れ、表現も多彩でした。創作・臨書を問わず、いずれの作品にも筆者の創意が読みとれて心楽し、そしてとても嬉しく思いました。線の練度が格別にすぐれ、早くも風韻を醸し出す作が見えたことも特筆されます。高校生の部は、これまでの書写書道の学びが生かされ、その積み上げの上に花開いた作品群であったと思います。
今回も作品を通して多くの児童生徒のみなさんにお会いしました。書と向き合うみなさん、そして、書を通して頼山陽に親しむみなさんに心からの敬意を表します。「手で書く文字が文字文化の根源」とは、ある漢字学者の先生がおっしゃった言葉です。パソコン等で容易に文字を表現できる時代であるからこそ、筆による詩句の表現を大切にしていきたいものと思います。ぜひこれからも書の学びを継続くださるよう願っています。みなさんの今後ますますのご活躍とご発展を心よりお祈りしています。
広島県立賀茂高等学校
教諭 迫 眞一郎 先生
第十回広島県公募書道展「頼山陽書道展」において、御入賞並びに御入選された皆様、誠におめでとうございます。お祝い申し上げます。
この書道展への応募作品は、毎年レベルの高い作品が寄せられます。今年も、審査会を楽しみにしておりましたが、期待通りに、素晴らしい作品が数多く寄せられました。
小学生の部では、日ごろから基本的な練習を積み重ねて、そのうえで課題に取り組んでいる様子が良く分かりました。特に一点一画を確実な筆使いで書いてあり、感心しました。作品をより良く仕上げるためには、字形を整えることも大切ですが、それ以上に送筆部分で筆をスムーズに運ぶ事を意識しながら取り組みましょう。
中学生の部では、楷書および行書の課題でしたが、書体の特徴をよく踏まえて、大らかに書字した作品が多く、書風が堂々としている点に印象が残りました。日頃の積み重ね、努力の跡がよく表れていました。長半紙に一行書きですから、課題文の各文字の画数による文字の大きさの違いや線の太さの変化を、違和感なく表現する事は、難しかったと思います。レベルが高い作品は、その点を上手に表現していて、素晴らしい作品になっていました。
高校生の部では、課題は頼山陽の作品の臨書や漢詩の創作ですが、挑戦し甲斐がある課題ばかりです。特に臨書では、日頃から様々な古典作品に接して、頼山陽の用筆法を理解できる素地を作っておくことが大切です。日頃の鍛錬が成果として表れる課題です。創作作品は、毎回様々な書体で書いた作品が出品され、見応えがあります。ただし数点、誤字を含む作品がありました。それらも筆力のある出来映えなのですが、残念な結果となりました。
さてこの書道展は、今日の日本の礎を築いた先人の志に触れることができる、よい機会です。この書道展を通して、書字の技法を高めると共に、自分たちの未来について考える、よい機会としてください。今後も、この書道展に大いに参加してください。
広島県立広島観音高等学校
教諭 伊藤 珠己 先生
第十回広島県公募書道展「頼山陽書道展」において、入賞・入選された皆さま、誠におめでとうございます。どの作品も課題の言葉と向き合い、細部まで気を配りながらも気迫に満ちた完成度の高い作品ばかりでした。
小学生の部では、用紙に合った文字の大きさや配列がよく考えられており、ていねいな筆運びで、一画一画を大切にされていると感じられる作品が多くありました。また、「真」、「忠孝」を堂々とした書きぶりで表現されており、くり返し練習された成果であると感心いたしました。
中学生の部では、課題の言葉をふまえ、卓越した筆づかいと均整のとれた字形、紙面に体裁よく収めた文字の配列により、「山紫水明」、「浩然之気」、「唯真故新」を効果的に表現されていました。特に穂先を利かせた筆運びは印象的で、日頃から練習に励まれた成果であると感銘を受けました。
高校生の部「高校生課題」では、線質の豊かさ、流れの美しさが印象に残りました。また、意図に基づいて効果的な表現となるよう構想し、工夫を重ね、詩の情感を個性豊かに表現されていました。また、「高校生臨書課題」では、頼山陽の詩や書と向き合い、字形、全体の構成をはじめ線質までよく研究され、見事に表現されていました。両課題ともに日頃から書に親しみ、練習に励まれているからこその出来栄えであると感銘を受けました。
今後の参考として、字典を活用される際、どの収載碑帖が適当かを表現意図や紙面構成から判断することも一案と思います。
作品の制作過程では、思い通りに書けず、表現の方向性に迷うこともありますが、困難を乗り越えて出来上がった作品には、奮闘の成果と個性が表出されているように思います。本書道展において、頼山陽の詩句を豊かに表現された多くの作品に出会えたことに感謝いたします。
広島県教育委員会 義務教育指導課
指導主事 横岡 洋子 先生
第十回「頼山陽書道展」に県内外の小・中・高校生から、多数の力作の応募がありました。どの作品からも、応募された皆さんが書という奥深い世界に真摯に向き合い、日々の厳しい稽古を重ねた確かな証が、紙面より伝わってまいりました。
小学校部門では、「真」や「忠孝」といった楷書の課題に対し、基礎的な技法を正確に守りつつ、線質に込めた情熱を感じる作品が多く見受けられました。「真」においては、凛とした清らかさと力強さを備えた運筆が、「忠孝」においては、字形全体の安定感を保ちつつ、点画間のつながりを意識した丹念な筆致が印象に残っています。特に優れていた作品は、始筆から終筆まで、迷いなく気持ちのこもった筆遣いから、日々の鍛錬の成果がはっきりと見て取れました。
中学校部門では、字形の整え方や運筆の滑らかさ、筆圧のかけ方といった技能の高さに目を見張るものがありました。技術のみならず、生徒の皆さんがそれぞれの言葉の持つ意味を理解し、書として表現していることが、表現の随所から伺えました。例えば、「浩然之気」では、天地に恥じない行動から生まれる大きく強い精神を堂々と表現され「山紫水明」では、自然の澄み切った美しさを流麗な筆遣いで表されていました。また、「唯真故新」では、自分を飾らない正直さ、という頼山陽の教えを、素直で飾らない筆致で表現されており、その解釈の深さに感銘を受けました。
高校部門は、小・中学校で培った基礎技術を基盤とした上での創造的な表現に、芸術としての完成度の高さを感じました。臨書課題では、古典の書体の特徴を的確に把握し、墨継ぎや連綿といった細部の表現技法への深い探求が伺えました。創作課題においても、頼山陽の詩文の背景への深い洞察に基づき、自らの解釈を多様に表現する工夫が見られ、書への永続的な愛好心が伝わってきました。
いずれの部門も、優れた作品は、頼山陽がそれぞれの言葉に込めた思いを、書き手自身が深く解釈し、独自の表現力をもって昇華させている点で共通していました。
今後も、本書道展が、多くの児童生徒たちが伝統文化に触れるとともに、書を通して広島ゆかりの頼山陽の詩文に触れる貴重な機会として継続していくことを心から願っております。
広島県教育委員会 義務教育指導課
指導主事 宮岡 大輔 先生
第十回広島県公募書道展「頼山陽書道展」において、入賞・入選された皆様、誠におめでとうございます。今年度も、多くの児童生徒が、頼山陽の詩や句をもとに創意工夫を凝らし、それぞれの課題に熱心に取り組んでくださったことを大変喜ばしく思いました。
頼山陽は、十二歳のときに著した「立志論」で、学び続けることの大切さについて表現しています。その言葉どおり、学び続けながら「日本外史」をはじめとする著作を完成させるための努力を惜しみませんでした。今回の書道展においても、頼山陽が遺した詩や書などから、その考えや生き方が伝わってくるような言葉が課題として設定され、小・中・高それぞれの部門において、一人一人の児童生徒がその意味を深く理解しようとしたり、試行錯誤を繰り返したりして、努力し続けている様子が伺える作品が多く見られました。
小学校部門では、「真」と「忠孝」が課題でした。いずれも字形のバランスを取ることが重要ですが、文字の大きさや配列といった構成を意識して、丁寧に仕上げられた作品が多く見られました。その中で、特に、堂々と力強い線で表現された作品が印象に残りました。
中学校部門では、「山紫水明」、「浩然之気」、「唯真故新」が課題でした。中学校部門になると、課題の文字数が増えたことで、文字の配置や文字と余白とのバランスを見るなど、全体を俯瞰しながら書かれている作品が多く見られました。その中で、特に、線に強弱をつけながら流れるような筆遣いで表現された作品からは、書の美しさや雄大さを感じることができました。
高校部門では、臨書と創作の課題がありました。小学校・中学校部門と比べ、非常に難しい課題ではありましたが、頼山陽の書と向き合い、その意味を考え、創意工夫しながら書かれたことが伺える、創造性に富んだ作品が多く見られました。その中で、特に、感性や想像力を働かせながら、頼山陽の書の意図を踏まえつつ、独自性溢れる作品が印象に残りました。
今後も、多くの子供たちが書を通して頼山陽について学び、郷土が生んだ頼山陽という先人の業績に触れていく機会になることを切に願っております。














